大会長挨拶

大会長 井上 詠

日本総合健診医学会第53回大会
大会長 井上 詠
東海大学医学部総合診療学系健康管理学准教授

日本総合健診医学会第53回大会を、来る2025年1月31日(金)、2月1日(土)の2日間、千葉県浦安市のグランドニッコー東京ベイ舞浜で開催いたします。本大会は第29回国際健診学会(The International Health Evaluation and Promotion Association: IHEPA2025)(大会長:西﨑泰弘 本学会理事長)との同時開催となります。COVID-19の感染状況は終息には程遠いものの一応の落ち着きをみせ、ほぼ従前通りの社会活動が行われるようになっています。感染対策には細心の注意を払いながら、現地(リアル)開催を前提として準備を進めております。

今回のテーマは「継往開来:エビデンスと経験を受け継ぎ新しい時代の総合健診を切り開く」といたしました。2023年に学会設立50周年を迎え、大会での50周年記念シンポジウムの開催や50周年記念誌の発刊など記念事業をほぼ終えて、学会は新たな50年に向けて再始動しております。長年われわれが培ってきた総合健診の知恵・経験と、AIやゲノム医療、リキッドバイオプシーといった新しいテクノロジー・検査法をいかに融合していくかといった、学会の次の50年の飛躍につながるような魅力的なプログラムを企画しております。また、性差医療、フレイル・オーラルフレイルなど普遍的かつ注目されるテーマも取りあげていきたいと考えております。

私自身の専門は消化器疾患やがんですが、がんが日本人の死亡原因第1位になって久しく、がんが個人や国家の医療費増大や経済的損失に大きな影響を与えています。早期発見、早期治療が肝要になりますが、発見が遅れると治療費が増加するばかりでなく、休業や就労状況の悪化などにより労働力の喪失と収入減少をきたし、患者本人のみならず家族や雇用事業主にとっても時間的・経済的な損失をもたらします。がんの早期発見のためには“けんしん”(健診・検診)を定期的に受診することが大切ですが、国が定めているがん検診の受診率、精検受診率はいまだ低いと言わざるを得ません。私たち“けんしん”を生業とする者は、受診率を上げるために様々な機会で啓発活動に取り組んでおりますが、その先に横たわる大きな問題にも直面せざるを得ません。それは、国やわれわれ健診団体等の取り組みが功を奏して検診受診率、精検受診率が大幅に向上すると、マンパワーを含めた健診・検診リソースが圧倒的に不足するということです。医師を含むヒューマンリソースは教育・研修の点からも一朝一夕に増やすことは難しく、また、検査機器などのリソースについても大胆に増やすことはできません。想定されるシナリオとしては、医療スタッフ、検査機器のパフォーマンスを上げるために、健診・検診の場にもAIなどの新規テクノロジーがますます導入されるでしょう。画像認識技術を応用したAI画像診断や生成AIを用いたテキスト(受診者用コメント、指導テキスト)作成などを導入している施設もみられます。ChatGPTなどで明らかなように、AIは万能ではなく誤ることもあります。あくまでもAIを使うのは「人」であり、患者・受診者に対して責任を負うのは「人・組織」ですので、便利で有用な新しいテクノロジーをどう使いこなすかが求められる時代になります。AIをひとつのトピックとして、そういったことを考える大会にしたいと思っております。

第53回大会は都心近郊の千葉県浦安市での開催となります。会場のグランドニッコー東京ベイ舞浜は第45回大会(西﨑大会長)で使用したホテルがリブランドされた会場です。都心から約30分という好立地で、リムジンバスで羽田空港から約45分、成田空港から約75分と国内外からもアクセスしやすい会場です。会場ではアカデミックに集中していただけるとともに、空き時間や大会前後にはリゾート気分を満喫していただけます。

多くの皆様と現地でお目にかかれますことを楽しみにしております。